「――なんか、蒼天街でも祭りを開催するらしいぜ。」

石の家のエントランスで、テーブルに肘をついてそうボヤくのはエオルゼアの英雄、ヴァニタスだ。先程まで疲れた様子でテーブルに突っ伏していたのだが、どうやら蒼天街で新しく開かれる祭りの準備を手伝わされたらしい。

「この間までやってた紅蓮祭や新生祭に触発されたとかで、結構デカめにやるんだと。だから、ぜひ俺たちにも来てほしいって言われたんだが――」

「そういうことならっ! ヴァニタスさんは是非とも行かなきゃいけないでっすね!」

――そう言うなら手伝わすなよな、という言葉はタタルの大きな声に遮られ、ヴァニタスはその声量に顔を顰める。タタルはそのことを気にした様子もなく、両手をブンブンと振っている。

「それから、イシュガルドなのでっすから、エスティニアンさんも一緒に行くのでっす!」

「ハァ!?!?」

タタルの言葉に、ヴァニタスが驚いたように頬を赤く染めて立ち上がる。しかし、タタルはそれを気にも留めず、壁にもたれ掛かるエスティニアンの方へと顔を向ける。

「――どうして俺が、わざわざ行かなきゃならない。別に、他の誰でもいいだろう。」

エスティニアンは面倒くさそうに顔を顰めるが、思わぬところからタタルを後押しする声が入る。

「――あら、この祭りはイシュガルドの復興祝いも兼ねているそうよ。ヴァニタスが貰ってきたチラシにそう書いてあるわ。」

先程ヴァニタスがテーブルに放り出していたチラシを片手にそう言うのは、ヤ・シュトラだ。彼女は不敵な笑みを浮かべながら、さらにエスティニアンへ言い募る。

「こういうことなら、元蒼の竜騎士として参加する義務があるのではなくて? ……それとも、浮かれた人々の中にヴァニタスひとりを放り出すのかしら?」

ヤ・シュトラがそう言い終えた途端、エスティニアンはハァ…と大きく溜め息を吐く。

「――そういうことなら、仕方あるまい。」

エスティニアンはそれだけ言うと、外に向けて足を進める。

「――オイ、待てよ! 仕方ねぇって、どういうことだよ……っ!?」

慌てたヴァニタスがその背に声をかけると、エスティニアンは足を止め、少し振り返ってこう答えた。

「――一緒に行ってやると言っているんだ。集合時間が決まったら教えてくれ。」

彼はそれだけ言うと、今度こそエントランスの外へと消えていった。